日付変更線
一人で仕事をしている分には周りの人のスケジュールは関係ないのですが、グループとなるとそうもいきません。年末の仕事で、ある一人だけニューヨークへ行かなければならないためどうしても参加できないようなので、代役を考えていました。昨日の午後、急にKAKOさんが「ニューヨークと日本は一日ずれている。例えば13日に日本を出発したら、ニューヨークには13日の出発時刻よりも早く着くから、こちらの仕事をやってから飛ぶことも可能なのでは・・」というようなことを言って、すぐに国際航空時刻表を見るようにと命じてきました。
ふむ、ふむ、なるほど、忘れていましたね、日付変更線のこと。
太平洋上の東経180度(西経180度)の子午線を基準に、陸上の町や村で日付が変わるなどの不便がないようにと、海上に設定されています。西から東にこれをまたぐ場合、日付を1日戻し、東から西にまたぐときに日付を1日増やす、のです。子午線という言葉も普段あまり使わないかも知れません。昔の中国では方角を干支(えと)の十二支で表していました。真北の方角が「子」、真南の方角が「午」となり、「子午線」とは真北と真南を結んだ南北線の意味になります。
ちなみに成田空港を○年○月13日の午前11時に出発すると、ニューヨークに到着するのはやはり同じ日の午前9時30分でした。ここから話が一気に飛んでしまうところが、こちらのアトリエTea Timeの面白さ。仮押さえしてある代役の人のことよりも、「八十日間世界一周」(1956年)の映画の話で、あっという間にコーヒーカップが空になりました。
原作は1872年にフランスのジュール・ヴェルヌによって発表された小説です。飛行機がなかった1870年代、「80日間で世界一周が出来るのか?」という賭けに挑んだ富豪の英国紳士の大冒険を描いた作品。自らの全財産の半分20,000ポンドを旅費に当て、残りの半分は紳士クラブの仲間たちとの掛け金にしました。もし80日で世界一周を果たせなかった際には、彼は全財産を失うことになる。ロンドン–スエズ運河–ボンベイ–カルカッタ–香港–横浜–サンフランシスコ–ニューヨーク–ロンドンという道筋。鉄道と蒸気船、帆船を駆使してと波瀾万丈の中で、素敵なインド人の女性も登場するけれど、旅行の途中トラブルに巻き込まれてしまったこともあって、予定よりも1日遅く81日目に世界一周の旅を終えてロンドンに帰り着きました。賭けに負けた!と、主人公は完全に思い込んでいます。しかし、東回り航路をとっていたため日付変更線を横切っていたので丸一日引けばよい事が判明し、なんとぴったり80日後だったというわけ。
まだ日付変更線が一般的ではなかった時代に、これを利用した物語だったのです。
あらすじが長くなりましたが、この映画の音楽もKAKOさんのお気に入り、ヴィクター・ヤング(Victor Young、1899年8月8日 – 1956年11月10日)です。彼はアカデミー賞に22回ノミネートされたのですが、生前に受賞することはできず、死の直前に公開された「八十日間世界一周」でアカデミー作曲賞を受賞したのだそうです。ほかの映画も思い出されます。「シェーン」「サムソンとデリラ」「大砂塵(原題Johnny Guitar)」などなど、・・・心の琴線にふれる懐かしい曲。