美意延年
2年前くらいに、京都の由緒ある小さな骨董店を覗いたことがありました。初対面の女主人の口から「び・い・えん・ねん」という言葉が何度か出てきて気になっていました。
クリスマスの頃に、その方が上梓されたという「染付」という本(※)がKAKOさんの元に届きました。
小皿もこんな写真がぎっしり。
「染付」ですから器のことを主としていますが、やはりあの言葉の由来がどこかに書かれていました。人生の節目に出会った言葉だそうです。
年が明けて、やっぱり気になるあの言葉。どのあたりの頁だったか・・・と分厚い本を探す前に、パソコンで調べてみることにしました。
今日は、その検索の行方が意外な方向にいっちゃったお話し。
「美意延年」
?意味は 楽しい気持ちで心配事がなければ、寿命を延ばすことができる 。
?中国の儒学者筍子の漢詩の一説より「心楽しければ長生きをする」の意。
? 「美」は「楽」と同じで楽しむ。 「意」は、気持ち、心。 「延年」は寿命を延ばすこと。
などなど出てはきましたが、先の本に書かれていた意味がもっと素敵だったように思い、あらためて本を手にして頁を探し始めました。ありました、ありました。
「こころばえ美しくとどめておくべし」ちなみに「こころばえ」は「心延え」にルビがふってあります。いいなあ、この解釈文のほうがずっと好き。
この本では、続けて「美しい景色や、美しい音楽や絵など美しい物をたくさん愛でて自分に取り入れること」を思い知らされた、と書いています。
そうですね、人生の岐路では、言葉が背中を押してくれることも、あります。
さてパソコンを閉じようとして、面白そうな展覧会のタイトルにも使われていたので、その個展の内容を見ていました。
美意延年展 ~養生の道を求めて~
心を楽しませれば、気血はスムーズに流れ、養生の助けとなる・・これが、「美意延年」の意味・・・心を楽しませる方法にも色々ありますが、最高のものは芸術だと言われています。・・・
と書かれていて、この人は中国ご出身の高名な書道篆刻家でした。普段あまり馴染みのない篆刻ですが、惹かれるものがあって、さらに「随筆」のページへ進みました。10数個のタイトルの中から「梅」を選びました。すると、象形文字のような模様のような篆刻図と「梅」について下記のようなことが記されています。
中国では古代から「梅蘭竹菊」を「四君子」と称えて、文人の理想的な在り方の象徴としている・・・梅はその中でも一番目に謳われる。 「梅」の字は・・・「木」は樹木の意、「毎」は髪に簪を挿し正装した女性の象形文字・・美しく凛とした姿が梅のイメージに重なる・・・。
かんざしを挿した象形文字が「毎」なんだ。
「愛海」のタイトルをクリックすると、海に関するさらに面白い文章が待っていましたよ。
という訳で、骨董のお店の話から梅の象形文字に飛んでいった一幕でした。
※「染付」(貴道裕子・著 ハースト婦人画報社発行)