美しさの基準

フランスと日本

由緒ある建物がある日忽然と姿を消して、その跡地が駐車場になったことがありました。谷崎潤一郎や与謝野晶子など、作家や文化人といわれる方々が多く滞在したことでも知られた場所だったのです。壊すのは一瞬、作るには多くの時間と人間のロマンが重なり合って出来上がります。行政は何故、歴史的建造物をいとも簡単に駐車場にしてしまうのでしょう。怒り心頭に達す、という心境です。

学生時代のパリで・・・と始まったKAKOさんのお話し。パリの街並は、戦前からほとんど変らぬ建物で成り立っています。そういう中にも、時折新しいアパルトマンが建築されますが、当時、1970年代(!)に居た頃は、そういう建物を見て「新しくていいなあ」と、思ったままを言ったところ、フランス人の友人が「ああいうのは美しくない、きたない」と、はき捨てるようにつぶやいたので、びっくりしたそうです。
その意味が分かるようになるには、更に長い年月をパリで過ごすことが出来たからだ、と言います。

数百年もの間人々と共に生き年月の経過と共に黒ずんだ石の建造物が、世紀を越えて今現在もここに存在するということに感動しますし、古き良きものをすぐには新しいものと取り替えてしまわない感性が、連綿と残っていることは見習いたいことの一つです。古臭いというだけですぐに壊し、新しいものと取り替えようという前に、美しく残してゆこうと思い立つこと。日本全国の一つ一つの町らしさは、そういうところから変ってゆくように思いました。

Posted by アトリエール