パソコンをアンダンテで打つ

旅の途中に

ツアーも中盤過ぎて、折り返しの地点です。
大分から小倉まで「ソニック」という電車に乗りました。ちょうどお昼時にさしかかるため、一行のそれぞれは大分駅でお弁当を買うのに奔走。私は、地元のおじさんおばさんが野菜や柑橘類を売りに来ているのを覗いて、手作りの「ちらしずし」を購入。レジでは、スタッフの一人で若いNさんが、肩にも腕にもバックや荷物をかかえているのに、何やら山のようにレジ台に積んでいます。
それ何?と尋ねると、「大分だからカボスの○○ですよ」。○○は聞き取れませんでしたが、いろいろな料理に活躍するのだとか。一瞬、引き返して探そうと思いましたが、発車の時間が迫っているので、あきらめました。

このNさんは、時々思いがけない一面をみせる人。
先日、広島駅のホームで皆に合流した時、「筆を買ったんです」という私に、Nさんは即座に「熊野筆?」と言い、自分は毎週一回書道の先生に見てもらっている、とのことでした。もう師範級の腕前の様子。
それに、東京で沢井一恵さんの十七絃筝リサイタルでバッタリ会った時も、学生時代にお琴をやっていた、今はツメしか手元にないけれど、とつぶやくのでびっくりしたばかりです。
生きている時間を沢山楽しんでいそうな面白い人。
KAKOさんにその話をすると、「パソコンをアレグレットよりアレグロで打つ人」という驚異的な操作の速さを褒めていました。

そういうKAKOさんは、今回の長旅に忘れ物があったようです。というか、敢えて持って来なかった。
いつもは、電車の中などで読むように文庫本を欠かしていないのですが、本の代わりにスーツケースに入れてきたのは、作曲中のオーケストレーションのための五線紙。少しでも、仕事をやろうとしていたようです。
旅用に通常サイズを縮小コピーしてきたため、五線の間隔も狭く、音符もかなり小さくなります。

しかし、揺れる電車の中では、音符が思うような位置に書き込めないという事がわかり、大分駅では、お弁当よりも本を探しに駅の近くを歩いたそうですが、結局本屋は見つからず、がっかりしていました。
いまどきは、本といっても電子書籍の時代がやってくるのだろうか、パソコンをアンダンテやレントで打つ者には、まだピンとこない・・・と。

小倉駅で「のぞみ」に乗り換えて新神戸まで。約4時間の移動でぐったりですが、さいわい、公演日は翌日なので少し気持ちに余裕がもてます。

Posted by アトリエール