パソコン&辞書

時々のメモ

今どきは、どんな種類の仕事であってもコンピューター必須の環境になっているかと思いますが・・・。ちょっと分らない漢字や英語などの綴りを調べるにも、辞書ではなくパソコンを開く人が多いのではないでしょうか。
そんな話題です。

今週末は都内で録音スタジオに入ります。
KAKOさんが音楽を担当する映画(2020年公開予定)のためのもので、ここしばらくの最終段階には、KAKOさんはスコアの整理やら自分が演奏するピアノの部分をリハーサルしたりと、手を抜けずにフーフー言いながら取り組んでいます。

スタッフの私の仕事の一つには、録音ご担当のエンジニアさんに渡す音楽リストの、一覧表作りがあります。一覧表で、ストリングスや管楽器などの録音順をどうするか、いわゆるタイムテーブルを決めなければなりません。どの音楽にどのくらいの時間を要するか・・、OKテイクが直ぐにとれるか・・などなど、経験からくる予想能力を発揮しています。

ところで今回の映画では、生楽器だけではない音楽処理が必要となった為に、オーディオデータという項目を一覧表に作成しなければならなくなりました。
勿論カタカナで書いても良いのですが、他の項目にピアノならPf、ヴァイオリンならVlなどの英字表記をしている関係で、やはりここもということで、データをDATAと入れてみました。ところが手書きの時には感じなかったのに、記入されたパソコンの画面を見ていると、どういう訳か何となく違和感があったのです。
それで、これでいいはず・・・だけど、と思いながら手元にある英和辞書をパラパラめくってみました。
 da’ta (datumの複数形)
 datable(年代を推定できる)
と出てきて、その間の行にはdataそのものは見つかりません。

えっ?もしかしたらスペリングが違うのか?まさか・・・。

KAKOさんにSOSしてみましたら、「アルファベットならフランス発音でデ(D)ア(A)テ(T)ア(A)でしょ」との返事。
実は辞書には載っていない・・・と言ったところ、「その辞書が古すぎるのでは?」とのこと。

ハイ、その通りでした。
譲り受けて使っていた英和辞書は、焦げ茶色の革表紙も擦り切れてかすかに IWANAMI という文字が読めるくらいの1970年代初頭のアンティーク感のある物。1,100頁程度あります。当時は携帯電話も普及していないので、データという言葉は掲載する必要がなかったのですね。

映画「舟を編む」を観たときの、編集者達それぞれが辞書編纂にのめり込む姿を思い出しました。
変わった題名の映画だと思っていたのですが、「辞書は言葉の海を渡る舟、編集者はその海を渡る舟を編んでいく」という意味で付けられたのだそうです。

古い辞書とパソコンを見比べながら、フッと一息ついた日でした。

2019/01/24

Posted by アトリエール