しづけき窓に

閑(シズ)かな日

昨日、福岡から京都経由で福井に到着しました。京都発の「サンダーバード」の車窓から、琵琶湖を眺めながらのすがすがしいひととき。田畑に水がみなぎり、以前、NHKの番組「里山?」の音楽をやりましたが、まさしくその光景が目の前に広がっています。

福井駅に着くと、主催者の方から宿泊先のホテルの鍵の入った封筒を手渡されました。大勢で移動しているので、主催者がまとめてチェックインしておいてくださるのです。その封筒の中に、福井観光マップが入っていました。
何気なく見ていますと、市街地のあたりから少し離れたところに、大きな川と緑色で山の絵が書いてあります。それは、足羽川(あすわがわ)と足羽山でした。ルビがなければちょっと読めないですね。川の堤防には600本延べ2.2キロの桜並木で、「桜の名所100選」にも入っているそうです。4月上旬が満開時ですから、花を楽しむ事は出来ないと思いましたが行ってみました。天気も良く、新緑の葉桜のトンネルがずーっと続いていて気持ちがいいです。時折、散歩をしているご年配の方々や自転車で通り過ぎる女学生ともすれ違いました。

途中の「桜橋」のたもとに、足羽山に通じる案内板があります。少し先の、愛宕坂というなだらかな石段を登りかけたところに、「福井市橘曙覧記念文学館」という建物がありました。この人は、タチバナ(ノ)アケミという名前で、江戸期の歌人・国学者だそうです。かの正岡子規も絶賛した人物で、おりしも「松平春嶽と橘曙覧の交流」という展示をしていました。

松平春嶽は幕末に活躍した福井藩主ですが、二人の間で交わされた短冊などから、橘曙覧の人柄が浮き彫りになってくるように感じました。それと、書というか筆跡にも惹かれ、しばし佇んで見とれました。帰りに売店で購入した全歌集のあとがきによると、良寛、亀田鵬斎と共に「近世の草書三絶」と賞賛する学者もいるようです。

「たのしみは・・」ではじまり、「・・時」で終わる「たのしめる歌」を作り合うことがあったようです。記念館のチケット(しおり)には橘曙覧の歌、「たのしみは朝おきいでて昨日まで 無かりし花の咲ける見る時」。
松平春嶽の歌、「たのしみはこゝろにかゝる事なくて しづけき窓に文をよむ時」。

別行動をしていたKAKOさんは、その愛宕坂の上のほうの神社へ行く時、道の真ん中にモミジの大木があったので、驚いたそうです。「芽吹きの葉の色のうつくしさも見事だった。町並みを見渡す事も出来、福井は高層ビルが少ない事も幸いしているのかも知れない、今回の印象は、なんとなく”こころしずかなる町”」と言っていたので、春嶽の歌”しづけき窓”と少し通じると思いました。

Posted by アトリエール