林檎をたずさえて

閑(シズ)かな日

先日の続き。

シードルのお話しが出てくる吉村喜彦作「バー・リバーサイド2 二子玉川物語」。本の表紙は前頁の1月20日に掲載。
全五話の短編集です。
その第二話「星あかりのりんご」。
主人公は藤沢あかねという30代半ばの女性で、フランスに滞在し、日本発注のコーディネーターとしてバスクに取材へ出掛け、そこで「シードル」に出逢うのですが、それがのちのち彼女に訪れる帰国後の人生の、ターニングポイントになろうとは・・・。

真っ赤な林檎をたずさえて、「バー・リバーサイド」の扉を開きます。
(読者の方々は、シードルの原料が林檎だということはご存じですよね)

第二話の中身にも私の好きなフレーズがいっぱい溢れていますが、その中からひとつ。
あかねとバーのマスターの静かなやりとり。

「どうしてりんごの香りってこんなに心を落ち着かせてくれるんだろう・・・・」
「きっと、ひとに寄り添うくだものなんだね」

皆さまも、こんな文章に、フーッと一息ついてください。

他の4話のタイトルは、
「海からの風(シー・ウインド)」
「行雲流氷(こううんりゅうひょう)」
「ひかりの酒」
「空はさくら色」
が収められています。()内はルビでふられています。
東京都世田谷区二子玉川(ふたこたまがわ)、通称ニコタマ住民もそうでない方々も、文庫の帯にあるように”川のほとりの小さなバーへ”是非!足を踏み入れてみて下さい。540円で、夢の隠れ家に誘い込まれます。

さて、世の中に沢山の作家サンがいらっしゃいますが、吉村さんとの最初の出会いは1998年。KAKOさんが珍しく半袖姿の写真なので、夏だったようです。
とある会員誌のインタビューアーとして目の前に登場したのでした。
その原稿が届いた時、何と対象であるKAKOさんに寄り添った文章なのだろうか、と感動してしまったのでした。
前述のりんごのようです。

・・・自然の中に包摂され、同化しながら音を紡ぎ出していく彼の曲のタイトルには「光」や「水」や「風」という言葉が多い。うつろいゆくものに感応してゆく加古隆の姿がある・・・

最後の方で・・・
「映像の世紀」の音楽がなぜ心に残るのかがわかりかけてきた、と書き・・・生命へのいとしい思いが、そこにふるえるように脈打っていたからだ・・・と締め括られている。

20年前の掲載誌は、今もKAKOライブラリーに大切に保管されています。

ここで、1枚の写真を。
プロデューサーであり奥様でもある吉村有美子さんを伴って、お二人でKAKOさんのコンサートにも毎回のように来て下さいます。その有美子さんから届いた多摩川上空の、ある日。

”仏の顔のスーパームーン ”というタイトルを付けて送ってくださいました。
傑作ですね!

KAKOさんのコンサート、というLiveを通じて、今も交信させていただいているのです。

2018/01/27

Posted by アトリエール