青い蓮
秋の10月5日のコンサートは、京都の青蓮院門跡(しょうれんいんもんぜき)というお寺。
門跡寺院とは、門主(もんす=住職)が、皇室や摂関家が出家して受け継がれてきた特定の位の高い寺を称し、天台宗三門跡は、青蓮院、三千院、妙法院となっています。「青い蓮」は青色の蓮華、つまり仏・菩薩(ぼさつ)の目にたとえたり、慈悲という仏教の教えの根幹を形容する言葉、とか。
門前の大クスノキ
現在の門主(旧東伏見宮家の東伏見慈晃さま)と初めてお目にかかった際に伺ったお話しを、少し書きます。
門主の父、名誉門主は現在102歳を超えられたと思いますが、戦前、宮家の一員であったころ、ピアノを熱心に弾いていらしたそうです。皇族は必ず何か楽器をたしなむという掟のようなものがあるそうです。戦前はN響と日比谷公会堂でハイドンのピアノ協奏曲を披露したこともある腕前。その後、仏門に入ってからも弾き続け、戦後の窮乏生活の中でも手放さず愛蔵していたそうです。しかし25年ほど前からは弾くこともなく、買ってから70年以上経ち傷みは激しく、単に思い出のものとなっていたところ・・・。
このピアノは、1932年製造のドイツのBLUTHNER (ブリュートナー)。80年は経っていますね。
大阪にブリュートナーの修復できる会社があることがわかり、3年ほど前に1年がかりで完全修復したのです。門主は、父である名誉門主が苦楽を共にしてきたピアノに、新たな響きを取り戻せて、父へのいい孝行が出来たと、嬉しそうでした。
さて、縁とは不思議。
何故KAKOさんがここでコンサートをすることになったのか。
まず、このピアノを修復したのは、KAKOさんの指定調律師でもあるB-tech JAPANの菊池和明さんだったのです。彼は、若き頃にウイーンのベーゼンドルファー社で、実際にピアノを作ったこともある凄い技術者。
今年の40thアニヴァーサリーコンサートに、京都や奈良のお寺を候補に入れたいと考えていたKAKOさんの思いと、京都在住の方のお力添えで、現在の門主さまとお会いすることになり・・・。そうして、由緒あるピアノを試弾したのでした。
お寺の中にピアノ庫もあり、湿度調整もされていました。なるほど、古い型のためペダルは2本しかありません。ところが、弾いてみると素晴らしい音、何と豊かな響きを持っていることか。KAKOさんはすっかり気に入りました。
勿論、お寺そのものも、端正なお庭も、溜息が出るほど奥ゆかしいです。
早速コンサート制作会社のプロデューサーに電話をかけ、秋の日程が決まって行ったのでした。
2013/06/11