夢なれど

LA MUSIQUE

先日CD「QUARTET」の1曲目のエピソードを書きましたが、2曲目のことも書いておこうと思いました。映画「最後の忠臣蔵」のテーマ曲で、副題は~夢なれど~。このお話しをいただいた時、時代劇の音楽は初めてなので、KAKOさんは「チャンバラシーンはどうしたらよいのか」と、監督さんにお会いする前には言ってました。でも、打合せで杉田成道監督がおっしゃった言葉の中に「なつかしい雰囲気の曲を」というのはありましたが、あまり刀で争うシーンはなさそう。自分のこれまでの音楽で向かっていけばいいのだ、と思ったそうです。

現代劇と時代劇の違い・・・もちろん洋服と和服は根本的に違うし、建物もビルディングと木造家屋というように、目に映るものだけでも違い過ぎます。それに蛍光灯と蝋燭(ろうそく)のあかり、という両極端な生活道具を比べてもしかり。どのシーンも「うつくしく、なつかしい」思いに満たされていきます。エンディングで役者さんやスタッフの名前が並んで出てくるところに、主人公たちの暮らしぶりを垣間見るかのようなカットが挿入されていました。試写の時に、編集助手をしていらした女性と「あのカット大好き」という話で盛り上がったのですが、それは主人公の孫左衛門と可音(かね)の草履が土間に置かれているところ、でした。他にも、あのシーンもう一度見てみたい、という箇所が沢山あります。今は失われた、日本人の忘れ物のような生活の道具や建具の様子、立ち居振る舞い。

それで今日のお題の「夢なれど」ですが、これは目に見えるものではありませんね。実はこの映画には、人形浄瑠璃の小屋も出てきますが「浄瑠璃」の語りが随所に流れてきます。近松門左衛門作の「曽根崎心中」。当時大ヒットした心中物ですが、言葉が凄い。
~この世の名残。夜も名残。死にに行く身を譬(たと)ふれば。あだしが原の道の霜。一足づつに消えて行く。夢の夢こそ、あはれなれ~
緊迫感のある語りと三味線とで語られたら、倒れてしまいそうな強さ、迫力があります。この中の「夢のゆめこそ」というくだりと「夢なれど」は「夢」という言葉で近しくもありますが、KAKOさんの気持ちは多分、孫左衛門という「武士のこころ」に寄せてつけたのではないかと思います。

いつだったか購入した1冊のノートにしおりが挿まれていて、最後の頁を開いてください、と書かれていて、「何だろう」といぶかしく思ったことがありました。そのとおりに開いてみると、そこにもしおりがあって、「ここに、何でもよい、あなたの夢、望むことをひと言書いてください」とあります。それで、書いておきました、大きな大きな私の夢を(^^)。普段は最終ページを開くことって無いんですよね。
実はそのことを今日、これを書きながら思い出したのです。書いた内容も、とっくに忘れていることでした。このノートの発案者が、人生は「夢なれど」・・・生きなさい、と言っているようでもあり、必ず叶うと呪文をかけられたようでもあり・・・、まっ、考え過ぎないで気楽にいこう、と思っていますけれど。

Posted by アトリエール