どこを切り取っても美しく

LA MUSIQUE

映画「散り椿」を観てまいりました。

スタッフで参加していたのに、試写室ではなく一般のお客様とご一緒に劇場で観るというのは稀なことです。

映画が始まる前に、面白そうな予告編が強いリズムの音楽と共に続々と映し出されますね。
でも「散り椿」には、そう言った現代性もエンターテインメント性も薄いのだろうなあ、そのギャップ感が、この映画らしさでもあるけれど・・と思っているうちに映画は始まりました。

個人的に私が好きだったシーンをいくつか。

まず、出始めの雪のシーン。
主人公である瓜生新兵衛(うりゅうしんべい・《岡田准一》)が手にしていたのは、夕餉のための「お豆腐」だったとは、直ぐには分りにくいくらい雪が降っていました。ここだけは繰り返して観たい場面でした。

和紙問屋の田中屋惣兵衛(石橋蓮司)が賊に襲われたことの詮議をしている城代家老(奥田瑛二)を、榊原采女(うねめ)役・西島秀俊さんが横目で見る時の一瞬の表情。映画でこの俳優を観るのは私は初めてです。

幼い頃から同じ道場で腕を磨き、四天王と言われていたという四人組の面々の、個性が出ている配役。その中で自決した坂下の弟・藤吾が拉致される場面と、新兵衛が救い出しに行く時に寺の山門をくぐる時の、背後の紅葉の見事さ。自然の醸し出す息を飲むような美しさと、人の動きの配置。

線香の包みを手にした富司純子さんと黒木華さんが、しずしずと縁側を歩く時の姿と白い足袋。日本女性の鑑のような光景を垣間見る場面でした。富司純子さんの着こなしも素晴らしい。

そして極めつけは、新兵衛が身を寄せた道場で、朝日の空気をまとって黙々と居合い稽古をしているところ。ここにはKAKOさんのテーマ曲が、弦楽四重奏とチェロの独奏とで流れます。岡田准一さんの刀さばきも姿も表情も最高点です。
このシーンだけ、もっと長くても良いのになあ、と思ったのは私だけか。
実際に、このシーンは倍以上撮影したそうですが、映画全体の長さから短くせざるを得なかったようです。

モントリオール世界映画祭で、「絵画(のような場面)の連続だった」という受賞理由で、審査員特別賞を頂いたのも頷けるというものです。日本人が忘れかけている美意識を持ち合わせた、外国人審査員が居るということでしょう。

そんなことは別として、皆さん是非ご自身で確認してください。

木村大作さんは今回は監督でしたが、キャメラマンとしては黒澤明監督が大事に思っていた、超一級の人だと納得する映画でした。

監督、俳優、プロデューサー、参加した人々すべての手書きのクレジットロールもいいですね!勿論KAKOさんも自筆のサインです。
エンドロールでテーマ曲の旋律がピアノで出てきますが、映画の中ではメロディーラインをほとんどチェロが演奏していたので、締めくくりにピアノの音色が聞えたのは良かったのでは?と思いました。
チェロ独奏は植木昭雄さんです。

「散り椿」サウンドトラックはエイベックス・クラシックスから発売中。映画では使用されなかった十七絃箏の現代曲風のも収録されているのですから、ファンには必聴盤です!(それは9曲目です)

今すぐ Amason でも試聴出来ますよ!

劇場では映画のパンフレットも販売していて、KAKOさんのコメントも掲載されています。

2018/10/03

Posted by アトリエール