鳶職人

旅の途中に

東海道・山陽新幹線の車内誌「ひととき」の、あまりに面白い記事を読みふけっていて、あやうく降車駅の熱海を乗り越すところでした。
「この熱き人々」という、長いことシリーズ連載になっている55回目に登場する人は、鳶(とび)職人。吉永みち子さんのインタビュー記事です。
まず、えっ?「鳶」?と思いました。何となくイメージするけれど、よく知らない。
元々このシリーズ自体が、そういう知られざる凄い人々を取り上げていますが、戸惑いながらページを開きました。

1976年生まれの多湖弘明(たこ ひろあき)さんは、高校生時代に大阪・梅田スカイビルの建築現場からのテレビ中継を見ていて、家が近かったので自転車を飛ばして現場を見に行った、というところから人生の歯車が回り出していたというお話。地上数百メートルの上空で鉄骨を組む・・・超高層ビルでの仕事に憧れたのです。
初めは大阪で最大手の鳶の会社でアルバイト。どんどん仕事を覚えていき、、、紆余曲折あって、東京スカイツリーの建設計画を知って目標を定め、東京に移り住む。
この人がユニークな面は、仕事の腕がいくら良くても人間性がイマイチだと現場のみんなから疎まれ仕事に加われないというので、ICレコーダーを自分に取り付け、自分が発する嫌な言葉を客観的に調査、人間性の改造に取り組んだというのです。
それもこれも、スカイツリーの現場に参加したい一心で。

ダボダボのズボン(ニッカボッカと言う名前)に地下足袋の姿。なぜ、ダボダボしているのか、ようやく分かりました。危険を回避する機能が詰まっている、のだそうです。高所の作業で、柱や梁や鉄骨などにダボダボが触れることで、猫のヒゲのような危険察知センサーの役目も果たし、、、風力計でもある。

風力計?

高層での鉄骨の上は、風が強い日などは風速40メートルにもなったりする。クレーンで吊り上げられる鉄骨があおられたり、風は最も怖い。
クレーンを操作する人たちは、空中のダボダボ部分が風でバタバタはためく様子で風速を把握して、慎重になる。
超高層建築現場では、危機察知能力も不可欠。彼はバンドをやっていたことがあったので、ギターやドラムや複数の楽器の音をバラバラに聴き取れるのが役立っているかも知れないとも語る。現場を見て、個々の危険度などを潜在意識に感知させておくのだ。

ただ高いところで仕事をするだけではありません。
建築現場では足場を組むのも最後に最上階のタワークレーンを解体して下ろすのも、最後に足場を外すのも鳶なので、「鳶がいなければ工事が始まらず、工事が終わらない」のだそうです。

翌日KAKOさんに、ニッカボッカの理由を知っているかどうか聞きましたが、勿論知りませんでした。「鳶」(洋泉社)という本も出版されたそうですが、読んでみたい、と思ったのは私だけかな。

さて、実は湯河原のアトリエの近くで建設工事が進んでいて、現場では大勢の作業員の方々が働いています。ダボダボ姿の人も道を歩いていたりしています。今日は生憎の雨模様ですが、クレーンも見えますし、工事の音もかなり響いています。


KAKOさんも時折は騒音で辛そうな日もありますが、この建物が来年完成すると、ゆったりしたカフェやレストランも出来そうなので、楽しみにしています。
建築ってワクワクするものですね。

2016/03/19

Posted by アトリエール