たった一粒の種

閑(シズ)かな日

伊予の国からなつかしいお便り。この方はいつも巻紙に筆文字です。封筒の中に入っていた写真を見て思わず「エッ?!あの枇巴が?」と声が出てしまいました。8年くらい前のことです。KAKOさんの好物の枇巴が届き、あまりにおいしいからと、気まぐれにベランダの鉢の土の中に埋めておいたのです。同じように、他の日には桃の種もやっていたような気がしていたので、15センチくらいになって葉が出てきたときには、枇巴のことは忘れていて桃かと思っていました。桃なら暖かい地方がいいね、檸檬も沢山作っていらっしゃる伊予のKさんに育てていただこう・・、などと言い合って、ダンボールに入れてお送りしました。「おいしい桃がなりますように」と手紙まで付けて。
そのうち、別の鉢の葉もグングン育ってきました。見ているうちに、これは枇巴ではないだろうか?と思うようになりました。案の定、Kさんから連絡があって「いただいたのは桃ではなく、枇巴ですよ。”実生”ということもあって、何年かしたら実をつけますよ。」との話。ホントかしら。
伊予では土に植えられているけれど、こちらの鉢では160センチ以上背丈を越すほどに育っても実は成らず、ごわごわの葉を揺らしていました。先日も梔(くちなし)の項で書きましたが、鉢物の引越しをしなければならない時に、枇巴のほうはご近所の方にお願いして山のほうに植えていただきました。

今年は写真だけですが来年は実もお送りしますよ、とKさんは書いていらっしゃいます。楽しみ、楽しみ・・。

KAKOさんいわく「たった一つの種だから、ポンっと捨てられてもおかしくない話」と、やはり感慨深げです。

Posted by アトリエール