ステキな子供たち
週末にいらしたお客様は、音楽家の奥様。ご主人は東京で仕事が詰まっているので、1歳半の男児を連れて2人でいらっしゃいました。最近の子持ちの奥さんって、とってもお洒落な方が多い。この人も優雅な夏のワンピース姿に黒の幅広の帽子。とても子育て真っ最中とは思えません。もともとこの人自身が演奏家でしたから、いつだってステージに華々しく登場できる人なのです。
さてお子様は、ちょうど昼寝から起きた直後ということで、着いた車から降りてきてもしばらくは笑顔がありませんでした。テラスに座り、大人同士で「暑いですね~」「東京はどうですか」「最近見つけたパン屋・・・」「子供には無農薬のバナナを食べさせたり・・・」など、あまり音楽とは関係の無いようなおしゃべりをしていたのです。そのときサーッと風が渡りました。それまで無風状態だったので、高い木々の葉がザワザワっと音をたてました。するとその子がふっと空のほうに顔を向けて、今の風の行方を追いかけているようにしたのです。
これまでも、何人かの子供連れの客人はありましたが、お子さんはジッと母親の顔を窺っているか、出されたお菓子に夢中になるか、とにかく歩き回るのが楽しくってしかたがないとか、でした。皆それぞれに100%個性発揮です。
「風の音を聴く・・」とは・・ね。私はびっくりしました。
この日はさらに驚く光景があったのです。あまり外のテラスが暑いので、部屋の中に入ってみようかと席を立った時のこと。その子が、両手を広げてゆらーりゆらーりと不思議な動きをしたのです。その手の先を見ますと・・・、テーブルの下に置いていた蚊取り線香の煙がゆらいでテラスに広がっていたんですね。今にも煙に合わせてゆったり踊り出しそうにしています。木に囲まれて太陽の陽射しがさえぎられているので、淡い煙の色も確かに目に入りますが、大人は蚊には注意していても煙には無頓着です。
まだ「ママ」くらいしか発言できない子供の、敏感なステキな姿に感動した日でした。
ありがとう、来てくださって。