お茶を淹れるとき

閑(シズ)かな日

札幌の知人から「初雪」のお便りがきました。晩秋の紅葉を楽しむ時間もないまま、冬が来てしまうとは。
猛暑の季節の記憶がまだかすかに残っているせいか、急激な気温の変化に、今年の寒波は凄くなりそうかな、と想像してしまいました。さて、夏の間は冷たいお茶を冷蔵庫で作っていましたが、寒い日のTea Timeはあたたかいお茶が欲しいです。でも、仕事にかき回されている時にお茶の用意をするのには、用心がいります。先日も急いで淹れた日本茶をKAKOさんに出しましたら、湯呑み茶碗が熱かったらしく、「持てないけど・・」と言われてしまいました。「それでは、持ち手のついたカップに淹れ直しましょうか?」と聞き返しましたら、「それはもっとダメ、少し待つから大丈夫」という答え。熱いから取っ手が付いているのは洋の器。熱くないから取っ手は付いていない、日本茶の器らしさ。「紅茶や珈琲は高温でも作れるけれど、日本茶は温度が大切・・・大切」と今更ながら復唱したのでした。

日本茶は、お茶を淹れる行為を通して、慌しい日常に一滴の精神のたしなみのようなものを要求している飲み物なんですね。そういえば、時々アトリエで取り寄せしている「棒茶」には、お湯の温度も書かれていて、「30秒待ってから」器に注いでください、となっています。いつも、秒針を見ながら淹れていますが、秒針を見ているときに電話が来たりすると、1分ー2分経ってからになってしまったり。仕事をしながらのTea Timeの準備は、なかなか「ゆるり」とはいきません。

KAKOさんにとって今まで一番おいしかった珈琲の思い出。昔、知人の家で珈琲を待っていたら、カウンターの向こうで家の女主人がアンティークのような手動のコーヒーミルでゆっくりと丁寧に豆を挽いていたのだそうです。それまでは、片手でガーッと豆を挽けるミルしか知らなかったので、その仕草も珍しかったのと、いただいた珈琲の味が最高だったのだそうです。ちょっと時間が戻るような雰囲気の、コーヒータイムですね。

時々、いらしたお客様から、「このお茶いい香り」とか、後になって「お茶がおいしかった」と言われると、心底うれしくなり、珈琲や紅茶、中国茶など、とにかく出来る限り平静にして、お茶の香りやお味を引き出せるようになりたいと思っている毎日です。

Posted by アトリエール