カフェにて
やっぱり雨で折れてしまったアナベル。
直径20センチもの花を支えるには、細く長い茎ですね。
先日、軽井沢の南西のほうにある塩沢湖の近く、有島武郎の別荘が移築されて「一房の葡萄」というカフェになっている所に行きました。
山百合が咲いて、奥の方に玄関の明かりがかすかに見えています。左側は車道。
内部には縦型ピアノや、軽井沢にゆかりのあった作家達の本も置いてあり、入り口の看板にはライブラリーカフェと書かれています。
「一房の葡萄」は有島武郎の短編の題で、主人公の少年が学友のクレヨンを盗んでしまったことが発端となっています。
そして読み進むうちに、少年の心が叱らなかった女教師への畏敬というか憧れに移っていき、終わり方が何とも印象に残ります。
「・・・そういって、先生は真白なリンネルの着物につつまれた体を窓からのび出させて、
葡萄の一房をもぎ取って、真白い左の手の上に粉のふいた紫色の房を乗せて、
細長い銀色の鋏で真中からぷつりと二つに切って、ジムと僕とに下さいました。
真白い手の平に紫色の葡萄の粒が重って乗っていたその美しさを僕は今でもはっきりと思い出すことが出来ます。
僕はその時から前より少しいい子になり、少しはにかみ屋でなくなったようです。
それにしても僕の大好きなあのいい先生はどこに行かれたでしょう。
もう二度とは遇えないと知りながら、僕は今でもあの先生がいたらなあと思います。
秋になるといつでも葡萄の房は紫色に色づいて美しく粉をふきますけれども、それを受けた大理石のような白い美しい手はどこにも見つかりません。」
この短編には白と紫と銀色が出てきますが、色の組み合わせ自体にも、通っていた学校に都会的なにおいを感じさせると思いました。
確か以前、KAKOさんが好きだった小説に福永武彦のものがあったと記憶しています。
その人の本も、置いてありました。
藤沢周平を知ったときには、ほとんど読破したようなことも言っていましたが、福永武彦と藤沢周平は、おそらく好きになった時代がかなり実年齢と関係しているようにも思います。もちろん藤沢・・の本は、「一房の葡萄」にはありません。
2013/07/28