意思伝達の行き違い

LA MUSIQUE

随分長く、アトリエからのお便りが滞りました。
理由は一つに絞られそうなので、ちょっと近況を。

先日、映画の音楽打ち合わせに行った時のことを書きましたが、9月になってからの打ち合わせ以来、疾風怒濤にまみれるかのような毎日なんです。
KAKOさんは、監督さんやプロデューサーから言われたイメージに添って作った音楽を持って行きました。

ところが、どうも雲行きが怪しい。
用意した曲にはどちらかというと誰でも歌うことが出来るような軟派系(?)の音楽もあります。(それも言われたとおり)
しかし、もっともっと激しさ厳しさ硬派のアレンジが欲しい、ということらしい。それに映画の前半と後半とで、「これこれこんなふうに」変化させていかなければ駄目だ。

えっ!そうだったの?

話は横道に逸れますが、2003年のフジテレビ系列「白い巨塔」のテーマ曲のデモをプロデューサーや演出家に聴いていただく日。
音楽が終わって、一瞬、会議室の空気がシラーッとしました。この日の曲は、エレキギターのディストーションという、その場の誰も想像しなかった演奏法でした。
(実はKAKOさんでさえ、この楽器しかないとようやく辿り着いた手法だったのです)

最初の頃の音楽打ち合わせで、演出家のかたは、「番組のタイトルバックには抽象的な塔の絵がきます。イメージとしては重くて深いんです。」とおっしゃった。
それがエレキギターとは、、、という訳で、皆さんあっけにとられたのですね。

しかしKAKOさんは、主人公の財前五郎のイメージに強靱さと悲哀とが織り交ぜになった人間くさい音楽が必要だ、と強く思っていて、これをテーマ曲とすることに一歩も引きませんでした。もちろん、「重くて深い」というタイトルバックには、エレキギターのバージョンではなくパイプオルガンを起用しました。
毎回、番組の初めの方で流れた荘厳な雰囲気の曲です。

さてさて、「えっ!そうだったの?」の9月の某日から音楽プランが振り出しに戻ってしまい、始動するには時間も足りなく、毎日毎日コンピューターに向かい続けております。

ちょっと音楽を手直しすれば良い、、、だからそんなに時間はかからんでしょう、、、。
意外と簡単そうにおっしゃるのですが、洋服でも、新しい布から作るものと既に出来たものをリフォームするのとでは、想像力も技法も全くといいほど違いますよね。

おそらく、意思伝達がどこかで行き違ってしまってこういう経過になったのだと、今後の反省点にしなければと思いながら、格闘しています。

それと今頃書いても意味は薄いのですが、今年の軽井沢が非常に寒かったことも、作曲のとじこもりには可哀想でした。確か8月で暖房を少し付け始めましたので、元来寒さに弱い関西育ちのKAKOさんの為には、早く湯河原に戻りたいと考えてばかりいました。

湯河原は暖かく、10月になっても陽射しの入る日は半袖で過ごすこともあります。
元気を出して、映画に貢献しないと!

2015/10/07

Posted by アトリエール